抽象から具象へのマッピングをもたらす自己関与

どこかの広い公園にギターをもった女性がいた。
彼女の歌を聴くために集まった人々は数十人いる。十重二十重。
カメラが周囲の人の表情を映す。
年配の人が多い。彼女とは世代が明らかに違う。
聴き入っている様子が表情から判る。男性も女性も。
記憶の向こうにある風景、そのときの気持ちもよみがえり反芻している。
そんな表情。
その歌手のために歌詞をつくったのは晩年の阿久悠さん。
感情を唄う歌は多いが聴く人に場面を想い浮かばせる詞が昨今少ない、
といった内容を含む彼からの手紙が紹介されていた。

聴いた人がそれぞれに固有のかけがえのない風景と感情を呼び起こされる詞。
そういうものを目指す作詞家の心意気があるとは知らなかった。
なにか崇高さを感じた。

クローズアップ現代
阿久悠